介護や看護の現場で働いた経験がある方は、一度は「ICF」を聞いたことがあるのではないでしょうか?ICFの意味を一言で表すと、「健康の構成要素に関する分類」のことです。全ての人に関する分類ではありますが、高齢者が対象となり、生活機能に問題が生じやすい介護の現場では特に活用されています。
この記事では、ICFについて、介護現場での活用方法や、介護予防のための評価などを含めて詳しく紹介していきます。
ICF(国際生活機能分類)とは
まずは、ICFとは何なのか、詳しく説明していきます。
健康の構成要素に関する分類
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health, 国際生活機能分類)は、前進である ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結に関する分類」を目的としていたが、「健康の構成要素に関する分類」として新しい健康観を提起するため、2001年5月にWHO総会で採択された。
生活機能上の問題は誰にでも起こりうるものなので、ICFは高齢者や障がい者といった特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」です。
「生きることの全体像」についての「共通言語」
ICF の目的を一言でいうと、「“生きることの全体像”を示す“共通言語”」です。生きることの全体像を示す「生活機能モデル」を共通の考え方として、さまざまな専門分野や異なった立場の人々の間の共通理解に役立つことを目指しています。
生活機能モデル
生活機能モデルとは、「生活機能」の分類と、それに影響する「背景因子」の分類、加えて「健康状態」で構成されるものです。それぞれの分野の相互作用をモデルで捉えることで、生きることの全体像を見出していきます。以下が生活機能モデルの図です。
では、生活機能、背景因子とは何かそれぞれ説明していきます。
生活機能
生活機能は、「心身機能・身体構造」「活動」「参加」の3つのレベルに分けられています。
心身機能・身体構造(生命レベル)
手足の動きや精神の働き、視覚、聴覚、内臓の働きなどを指す心身機能と、
手足の一部や心臓の一部など体の部分を指す身体機能の2つからなる、
生命の維持に直接関係する身体・精神の機能や構造のことです。
活動(個人レベル)
歩行やその他の日常生活行為だけでなく、調理や掃除などの家事行為、職業上の行為、趣味やスポーツの余暇活動などに必要となるすべての生活行為のことです。
ICFでは、この活動を「できる活動(毎日の生活の中で実行しているもの)」と「している活動(訓練や評価の場で、本人の頑張りや専門家の指導によって実行できるもの)」にさらに分けて捉えます。
参加(社会レベル)
家庭内での役割を果たす、働く、趣味の集まりへの参加、スポーツへの参加、地域組織での役割を果たすなどというように、家庭や社会に関与し、そこで役割を果たすことです。
背景因子
背景因子は、「環境因子」と「個人因子」の2つからなり、生活機能へ大きな影響を与えます。
環境因子
物的環境(建物・道路・交通機関・自然環境など)、人的環境(家族・友人・仕事仲間など)、態度や社会意識としての環境(社会が生活機能の低下のある人をどう見るか、どう扱うかなど)、制度的な環境(医療、保健、福祉、介護、教育などのサービス・制度・政策)と、広い意味合いでの「環境」を指します。
個人因子
年齢、性別、民族、生活歴(職業歴・学歴・家族歴など)、価値観、ライフスタイル、コーピング・ストラテジー(困難を対処し解決する方法)など、その人固有の特徴を指します。
ここにあげた特徴はあくまでも例であり、個人因子はさらに多様で、分類は将来の課題とされています。
介護現場でのICFの存在
ここまで、ICFについて解説してきましたが、実際介護の現場ではどのように活用されているのでしょうか。以下に紹介していきます。
利用者の健康状態の把握や共有
ICFは、介護の計画書を作成したり、利用者の健康状態の把握や共有のために使われています。その際には分類コードと評価点で表記します。
分類コードと評価点
- S(心身機能:身体構造)
- 7(章番号:s7運動に関連した構造)
- 30(第2レベルの分類:s7のうち、上肢の構造)
- 1(第3レベルの分類:第2レベルのうち、前腕の構造)
が分類コード、
- 2(第1評価点[構造障害の程度の大きさ]:中程度の問題、25~49%)
- 2(第2評価点[身体構造の変化の症状]:部分的欠損)
- 1(第3評価点[構造障害の部位]:右側)
が評価点の意味になり、このコードは「右の前腕に中等度の障害による部分的な欠損がある」ということを表しているのがわかります。
コードの詳細に関しては、厚生労働省の資料にありますので、より詳しく知りたい方はそちらをご参照ください。
アセスメントでの活用
アセスメントにICFを活用することで、利用者の状態を的確に把握した上で介護の計画を立てることができます。
目に見えてわかる健康状態だけでなく、生活機能や背景因子をまとめることで、その人に合った介護の形が見えてきます。
介護予防のための生活機能評価
介護の現場でのICFの存在について説明しましたが、生活機能を評価することは介護予防の観点からも効果的です。
なぜかというと、要介護認定の数が年々増えていく中、要介護度のグレードを上げないようにしたり、生活機能の低下が見られる高齢者を早期発見することで介護が必要になるのを予防したりするために、生活機能評価が重要だからです。
厚生労働省の「介護予防のための生活機能評価に関するマニュアル(改訂版)」より、その内容を紹介します。
このようなチェックリストや問診、身体測定などを行い、判定します。
生活機能評価で「生活機能の低下あり:介護予防事業の利用が望ましい」と判定された場合、65歳以上のすべての人が利用できる介護予防事業を利用することがおすすめされるという仕組みです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では、ICFについて、介護現場での活用方法や、介護予防のための評価などを含めて詳しく紹介してきました。
介護の現場で働かれている方にとって、ICFの考え方は非常に参考になるので、この記事を読んで生活機能への理解が深まれば嬉しいです。
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