【介護士のカスハラ実態調査】「この利用者の介護を続けたら自分は精神的に病んでしまうと思う」という声も

調査データ

株式会社SOKKIN(本社:東京都新宿区西新宿6丁目11−3 Dタワー西新宿 16F、代表取締役社長:本間 亮平)は、介護士向け転職エージェント比較サイトを運営し、介護士の転職支援を行っています。

介護の現場において、利用者との関わり方は非常に難しいと言われています。利用者に寄り添う必要がある一方で、業務外の要求をしてくる利用者もおり、悩んでいる介護士が多くいます。本調査では、介護士が受けた利用者からのカスタマーハラスメント(カスハラ)について調査を実施しました。

調査サマリー

・96%の介護士が利用者との関わりで困ったことがある
・利用者との関わりで最も困るのは「ワガママや言うことを聞いてくれない」こと
・約9割の介護士が利用者から暴力やハラスメントを受けたことがあると回答
・利用者から身体的暴力を受けたことがある介護士は約7割
・7割弱の介護士がカスハラを受けたにもかかわらず適切な措置をとられていない
・カスハラに対する職場の取り組みで最も多いのはマニュアル作成
・カスハラに対してのマニュアルなどはあるが、実行されていない職場も多い

調査の背景

近年、顧客が従業員やスタッフに対して迷惑行為を行う「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が問題となっています。これを受け、5月13日に政府はカスハラに関する対応を企業に義務付ける提言案をまとめました。介護の現場でもカスハラは多く存在しています。一般企業とは異なり、患者に寄り添う必要がある介護士の仕事において、利用者の要求をどこまで受け入れるのかという線引きが難しいというのも事実です。

こういった背景を踏まえ、2024年5月にインターネット調査で実施したアンケートの回答結果をもとに、介護士の「利用者との関わりで困った経験はあるか」「どんなことに困っているか」「利用者から暴力やハラスメントを受けたことはあるか」「どのような暴力やハラスメントを受けたか」「それらに関して上司に報告して適切な措置をとったか」「職場で行っているカスハラに対する取り組み」などをお伝えします。

調査の詳細

「(介護士限定)患者との関わりに関する簡単アンケート」
介護士の患者との関わりについて調査する。

・調査日:2024年5月10日〜2024年5月20日
・調査方法:株式会社クラウドワークスのパネル利用によるインターネット調査
・対象者:現在介護士の方
・回収サンプル数:75票

調査結果

96%の介護士が利用者との関わりで困ったことがある

「Q1.利用者との関わりで困った経験はありますか?」という問いに対して、「ある」と答えた方が75人中72人の96%という結果となり、ほとんどの方が利用者との関わりで何かしら困った経験があるということがわかりました。

利用者との関わりで最も困るのは「ワガママや言うことを聞いてくれない」こと

「Q2.利用者との関わりで具体的にどのようなことに困りましたか? 」という問いに対して、「ワガママがひどい・言うことを聞いてくれない」が最も多く47票、次いで「認知症患者の対応」が44票という結果になりました。他にも「業務外の頼み事をされる」などの回答も多く見られました。

「Q2-2.利用者とのかかわりで困った具体的なエピソードを教えてください。(自由記述)」という問いに対しては、以下のような声が上がりました。

【ワガママ・言うことを聞いてくれない(以下一部抜粋)】
・禁煙なのに、部屋でタバコを吸っていた(40代女性)
・ご飯後の定時排泄や口腔ケアに連れて行く時に拒否が多い(30代女性)
・尽くしすぎたりすると、わがままになってこの人には何を言っても赦されると思われて、暴言や無茶な要望などを伝えられる事が多い(20代女性)
・大音量でラジオを聴く利用者を注意すると逆ギレをされて、他の介護士の悪口を言っているなど事実ではないことを言いふらされた(40代女性)

【認知症患者の対応(以下一部抜粋)】
・認知症対応型共同生活介護の事業所で働いていて、同じユニット内に9名(女性7名 男性2名)住んでいるのだが、男性2名のうち1名は若く体力があることもあり、利用者さん同士の喧嘩の仲裁の際に大声で怒鳴ってきたり、椅子を投げ飛ばすなどの行為が頻回にあり困る。(30代女性)
・認知症の方で帰宅願望が強く施設から出て行こうとする方、事を終えたばかりではあるが認知症のため食べたことを忘れてしまい怒る方、入浴、トイレ誘導を拒否する方の対応(20代女性)
・認知症で近くにいる介護士に蹴る、叩くなどの行為を行う患者がいて、怖がって介助したがらないスタッフもいる(40代女性)
・帰宅願望が顕著に出る利用者は対応に困る。何かしらの環境要因があるとは思うようにしているが、やはり「ごはん作らなきゃ」や「子供が待ってる」など、その方自身がその時いる状況はそれぞれで、実際に正しいことであってもその方が納得することでなければ解決にはならない、という点が対応の難しさとして今でも悩むことが多い。(30代男性)

【業務外の頼みごとをされる(以下一部抜粋)】
・年賀状を送って欲しいと言われたりして何でも屋だと勘違いされていた(30代男性)
・30分に1回くらいのペースで「ジュース頂戴」「お菓子頂戴」「私の洗濯物はまだできないの?」と言いに来たり嫌味を言ってくる利用者がいた。他の業務の最中も構わずに言いに来るので高圧的で、さらにせかしてくるのでとてもやりづらかった。(20代女性)
訪問介護の介護士を家政婦やお手伝いさんのように思っている方がいて、ケアマネが作成した計画書内での業務しか出来ない旨を柔らかく伝えるが、激昂する方もいる。(40代女性)

【個人的に連絡先を聞かれる(以下一部抜粋)】
・一時期、お礼をしたいからと連絡先と住所を毎日のように聞かれた(30代男性)
・名字が少ないため、電話帳で実家の番号を探そうとされた(40代女性)

【お金問題(以下一部抜粋)】
・トイレなどの個室に入った時にお金を渡そうとしてくる(40代男性)
・利用者さんからいつもお世話になっているからこのお金受け取ってと言われた(20代女性)

約9割の介護士が利用者から暴力やハラスメントを受けたことがあると回答

「Q3. 利用者から暴力やハラスメントを受けたことはありますか?」という問いに対して、「ある」と答えた方の方が多く88%、「ない」と答えた方は12%という結果になりました。

回答した介護士の約9割が、患者から暴力やハラスメントを受けたことがあるという事がわかりました。

利用者から身体的暴力を受けたことがある介護士は約7割

「Q4.どのような暴力やハラスメントを受けたことがありますか? 」という問いに対して「身体的暴力」と回答した方が最も多く全体の71%に上りました。次いで「精神的暴力」と回答した方が53%、「セクシャルハラスメント」と回答した方が44%という結果になりました。

「Q4-2.利用者から受けた暴力やハラスメントについて具体的なエピソードを教えてください。(自由記述)」という問いに対しては、以下のような声が上がりました。

【身体的暴力(以下一部抜粋)】
・強迫性神経症の診断を受けている方で、常に暴力を振るってくる方がいた。横にいるだけでも殴りかかってきた。(40代男性)
・介助中に急に豹変し暴力行為をされ、避けきれず殴られ鎖骨にヒビが入った(30代女性)
・ベッドから車いすへの移乗時に顔を叩かれ、眼鏡のレンズが外れた(30代男性)
・機嫌が悪いときはクソアマと呼んでくる。入浴が嫌で噛み付いたり、髪を引っ張ったりされる(20代女性)
・拒否が強い方で、杖を振り回されることがあった(20代女性)

【精神的暴力(以下一部抜粋)】
・世代的に高齢者は、介護関連をしている男性は仕事がないから介護士をしているんだと思っている方もおり、情けない奴と罵倒される(40代男性)
・お風呂の入浴介助の時に、お風呂に入る際にオリジナルのルーティンがある利用者がいた。お湯をかけるタイミングなど一つでも手順を間違えると発狂し、怒鳴りつけられた。(20代女性)
・昭和の人間だからと諦めている部分もあるが、言葉遣いが荒いので、「殺す気か」や「バカにしているのか」などを平気で人前で言うので、自分が悪いことをしているように感じる。このままこの介護者を介護していると自分は精神的に病んでしまうと思っている。(40代男性)
・思い通りにいかないことがあるとスタッフに土下座を強要する。また育ちや家族などの事を悪く言われる事もある。(30代女性)
・利用者ではなく家族から罵声を浴びせられた(30代女性)

【セクシャルハラスメント(以下一部抜粋)】
認知症の男性利用者から性的な質問をストレートにされた。周りの男性スタッフも気まずそうにするだけで注意できない雰囲気で誰もフォローしてくれず。「そんな質問には答えられません」とはっきり断っても、認知症状のせいで何度も同じように聞いてくるし、理性が働いていない利用者さんだから怒るに怒れず本当にこの仕事を辞めたいと思った。(30代女性)
排泄介助中や体位交換中に手で胸を触られる。注意をすると手をつねられたり爪のあとがつくくらい引っかかれる。(40代女性)
・男性患者から移乗サポートのときにもう移乗をし終えているのになかなか離れてくれず、当の本人はニヤニヤしているというセクハラを受けた(20代女性)

7割弱の介護士がカスハラを受けたにもかかわらず適切な措置をとられていない

「Q5.暴力やハラスメントに関して、上司に報告して適切な措置をとりましたか?」という問いに対して、「報告したが適切な措置はとられなかった」という回答が最も多く57%、次いで「報告して適切な措置をとった」という回答が33%という結果になりました。

7割弱の介護士が、報告の有無に関わらず、受けたカスハラに対しての適切な措置を摂られていないという事がわかりました。

カスハラに対する職場の取り組みで最も多いのはマニュアル作成

「Q6.職場で暴力やハラスメントに対する取り組みを行っていますか? 」という問いに対して、「カスハラの対応に関するマニュアル作成」という回答が最も多く34票、次いで「利用者がストレスを感じないための施設づくり」という回答が25票という結果になりました。さらに「職場の巡回」という回答も多く見られました。

一方で、「特に何も行っていない」という回答も10票と比較的多く、いまだカスハラに対する対策がとられていない職場も多く存在するということがわかりました。

カスハラに対してのマニュアルなどはあるが、実行されていない職場も多い

「Q6-2.職場で行っている暴力やハラスメントに対する取り組みに関して詳しく教えてください。(自由記述)」という問いに対しては、以下のような声が上がりました。

【カスハラの対応に関するマニュアル作成(以下一部抜粋)】
・マニュアルや会議などはあるが、実際にそれがあるだけ行っているだけで実行されてない(30代男性)
・介護者からの暴力やハラスメントの対応マニュアルはあるが、自分の施設では従業員の少なさからマニュアル通りにしていたら介護者に手が回らなくなってしまうので、暴力やハラスメントがあってもマニュアル通りには対応できていないのが現状。(40代男性)
・基本的にマニュアルだったり最低限のことはあるが、あくまで最低限。結局ボケてしまったりしていると、本人もわかっていないので完全に対策しきることはできない。(30代男性)
マニュアルがあり発生した時は、上司にすぐ報告し聞き取りがある(40代男性)

【利用者がストレスを感じないための施設づくり(以下一部抜粋)】
・職員の目が行き届くところに利用者様がいられるような家具の配置などを行っている(20代女性)
・先ずは暴力やハラスメントの原因となっている部分についてカンファレンスを行っている。 それにより、人員配置を変える、本人が穏やかに過ごせるように環境を整えるなどの対策を取っている。(40代女性)
・患者に沿って起床や食事の時間をある程度、決めた生活リズムで取り組みを行っている(40代女性)
・言葉使いに気をつける。職員を変えて対応する。ひどければ退所してもらう。(30代女性)

【利用者の相談窓口や意見箱の設置(以下一部抜粋)】
・そこそこ大きな病院なので、巡回やご意見箱などを利用した取り組みがある(30代女性)
・基本的に目安箱のようなものが置かれてる(30代女性)

【コミュニケーショントレーニングの実施(以下一部抜粋)】
ハラスメント委員会を設置して勉強会や対応策、対応方法を研修している。しかし効果は薄い。身体拘束や虐待をしない研修は大いに効果があると思う。だが暴力や罵倒をしてくる相手に対して防御策はない。防御したり制止してその過程で内出血や怪我をさせてしまうと、暴力受けている側なのに訴えられる。介護士側ではハラスメントに対する取り組みは効果が薄い。法律で介護士を守るものを作らないと、仕事をする側のリスクが大きすぎる。(40代男性)

【監視カメラや録音機の設置(以下一部抜粋)】
・利用者の方、働いている職員が安全に過ごせられるように、廊下や食堂では監視カメラが設置してある(30代女性)
・いたるところに監視カメラを設置しており、ボイスレコーダーの使用も認められている(20代女性)

【その他(以下一部抜粋)】
・働き手の意見や気持ちを吸い上げる窓口を設置した(30代男性)
・ハラスメントは利用者だけでなく家族からも受ける。面会に来ない、病院に連れていかない家族ほど権利意識がたかい。そのため入居申込の段階で本人と家族に面談をしてカスハラ体質にあるか否かをチェックしている(30代男性)
・会社全体で会議を行い対応策を統一する。患者の家族に話をして無理なら移設も相談する。(40代男性)
・1人で介護をしない。暴力が増える時は看護師を同席させ対応する事を徹底した。(40代女性)

【特に何も行っていない(以下一部抜粋)】
・上司に相談するくらいしか対策はないが、我慢するように言われる(20代女性)
・暴力やハラスメントに対しての取り組みなどは気をつけましょうで終わってしまっていて何もない(30代女性)
・全く暴力やハラスメントに関して何もしてくれない(20代女性)
・特にこれといった取り組みはない。患者が職員に対しての暴力は何も対応しないが、患者が患者に対して暴力を働いた場合は退所指導する。(20代女性)

今回の調査を通じて

今回の調査で、回答した約9割の介護士が利用者からのカスハラを受けており、そのうちの7割弱の方が、被害に関して適切な措置をとられていないという事がわかりました。また職場で行われているカスハラに対する取り組みの調査で、マニュアル作成など形式上の対策はとられているものの、実際にマニュアル通りに対処されることはあまりない等の意見が多く見られ、今後介護現場でのカスハラに対する対応の改善の余地が明らかになりました。

株式会社SOKKINは、今後も介護士の皆さんがより良い職場環境で働けることを願いながら、現場の声にしっかりと耳を傾け、更なるサービス向上に努めてまいります。

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会社概要

会社名:株式会社SOKKIN
設立日:2021年4月7日
代表者名:本間 亮平
所在地:東京都新宿区西新宿6-11-3 D タワー西新宿 16階
会社HP:https://sokkin.me

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