実務者研修とは?|気になる研修内容や費用・受講のメリットなどを徹底解説!

お仕事

介護職で働かれている方なら、「実務者研修」は一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

実務者研修は長くて大変、などの口コミも多く、これから受講しようか悩まれている方は不安な気持ちもあると思います。

この記事では、介護職の実務者研修について、その内容や費用、受講するメリットまで詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

この記事でわかること 
・実務者研修の内容は大きく4つ
・実務者研修の費用は10万円前後が一般的
・初任者研修との違いはレベルや期間
・スキルアップや就職有利につながる

実務者研修とは

介護士の実務者研修とは、介護の現場で必要になる基本的な知識と技術を身につけるための研修です。
介護職員初任者研修(旧・ヘルパー2級)を修了している人が受けることができます。
研修が修了すると実務者研修修了証書が発行され、この証書は介護の現場で使うことができます。
また、研修が終了した後に介護福祉士の試験を受けることもでき、介護のスキルを高めたい方にはオススメです。

カリキュラム

実務者研修の内容は、大きく分けると「人間と社会」「介護」「こころとからだのしくみ」「医療的ケア」の4つです。
下記表が全てのカリキュラムです。

分野 科目名 受講時間
人間と社会 人間の尊厳と自立 5時間
社会の理解Ⅰ 5時間
社会の理解Ⅱ 30時間
介護 介護の基本Ⅰ 10時間
介護の基本 20時間
コミュニケーション技術 20時間
生活支援技術Ⅰ 20時間
生活支援技術Ⅱ 30時間
介護課程Ⅰ 20時間
介護課程Ⅱ 25時間
介護課程Ⅲ 45時間
こころとからだのしくみ 発達と老化の理解Ⅰ 10時間
発達と老化の理解Ⅱ 20時間
認知症の理解Ⅰ 10時間
認知症の理解Ⅱ 20時間
障害の理解Ⅰ 10時間
障害の理解Ⅱ 20時間
こころとからだのしくみⅠ 20時間
こころとからだのしくみⅡ 60時間
医療的ケア 医療的ケア 50時間
450時間
※「医療的ケア」は50時間と別に演習を修了する必要があります。

全てのカリキュラムを履修するには、450時間という膨大な時間がかかります。すでに介護の業界で働かれている方であれば、修了するまでに半年から長くて一年ほどかかることもあります。

それぞれの分野で学ぶことを、介護福祉士実務者研修テキストから一部抜粋して紹介します。

「人間と社会」の分野で学ぶこと

  1. 人間の尊厳と自立

    ・人間の尊厳の意義
    ・介護における自立
    ・自立した生活を支えるための援助の視点
    ・介護における尊厳の保持の実践
    ・尊厳を無視した介護の課題 ほか

  2. 介護保険制度の理解(社会の理解Ⅰ)

    ・介護保険制度の創設をめぐる社会的背景
    ・1990年代までの高齢者介護の制度と社会福祉基礎構造改革
    ・介護保険制度の基本理念
    ・保険者・被保険者
    ・介護職の役割 ほか

  3. 社会のしくみの理解(社会の理解Ⅱ)

    ・家庭生活の基本機能
    ・社会保障の目的と機能
    ・障害の種類と定義
    ・サービスの種類と内容
    ・虐待防止の諸制度 ほか

 

「介護」の分野で学ぶこと

  1. 介護福祉士と介護の考え方(介護の基本Ⅰ)

    ・介護福祉士を取り巻く状況
    ・社会福祉士及び介護福祉士法
    ・利用者に合わせた生活支援
    ・自立に向けたICFの考え方
    ・介護福祉士としての倫理の必要性 ほか

  2. 介護福祉士による介護実践(介護の基本Ⅱ)

    ・「その人らしさ」の理解
    ・高齢者の暮らしと支援の実際
    ・地域連携
    ・事故防止と安全対策
    ・健康管理に必要な知識と技術 ほか

  3. コミュニケーション技術

    ・コミュニケーションの技法
    ・支援関係の構築と意思決定の支援
    ・利用者の感情表現を察する技法
    ・コミュニケーション障害の理解
    ・視覚の障害に応じたコミュニケーション技術 ほか

  4. 自立に向けた生活支援技術の基本(生活支援技術Ⅰ)

    ・生活支援とアセスメント
    ・居住環境の意義
    ・生活空間と介護
    ・福祉用具の活用
    ・車いす、食事、入浴、排泄、衣服着脱、整容の介助 ほか

  5. 利用者の心身の状態に応じた生活支援技術(生活支援技術Ⅱ)

    ・安楽な体位の保持と褥瘡の予防
    ・食事に関する福祉用具とその活用方法
    ・頻尿、尿失禁、便秘、下痢、便失禁への対応
    ・睡眠に関する用具とその活用方法
    ・人生の最終段階の介護
    ・介護職、家族への支援 ほか

  6. 介護過程の基礎的理解(介護過程Ⅰ)

    ・介護の概念の見直し
    ・根拠にもとづいた介護の実践
    ・介護過程の必要性
    ・介護過程とケアマネジメントの関係性
    ・介護過程とチームアプローチ ほか

  7. 介護過程の展開の実際(介護過程Ⅱ)

    ・日々の実践のなかにある介護過程
    ・思考過程の訓練
    ・ケアマネジメントをふまえた介護過程の展開
    ・事例で学ぶ介護過程の展開
    ・現在の状況 ほか

  8. 介護過程の展開の実践(介護過程Ⅲ)

    利用者の特性に応じた介護過程の実践的展開
    ・利用者のさまざまな暮らしと介護過程の展開
    ・演習の進め方
    事例1 片麻痺のある高齢者の夢の実現に向けた支援
    事例2 在宅で終末期を迎える高齢者と家族の生活支援
    事例3 都会に住む一人暮らしの高齢者の生活支援
    事例4 介護老人保健施設で生活する利用者への支援

 

「こころとからだのしくみ」の分野で学ぶこと

  1. 老化に伴うこころとからだの変化(発達と老化の理解Ⅰ)

    ・老化が及ぼす心理的影響
    ・自己概念と生きがい
    ・加齢に伴う身体機能の変化と日常生活への影響
    ・さまざまな機能の変化 ほか

  2. 老年期の発達、成熟と健康(発達と老化の理解Ⅱ)

    ・発達段階と発達課題
    ・老年期の心理的課題と適応
    ・要介護状態と高齢者の心理
    ・高齢者に多くみられる症状・訴えとその留意点
    ・介護を要する高齢者によくみられる病気・病態 ほか

  3. 認知症の基礎的理解(認知症の理解Ⅰ)

    ・認知症ケアを取り巻く状況
    ・認知症ケアはなぜ「人」と「生活」に焦点をあてる必要があるのか
    ・認知症の中核症状
    ・認知症の人にかかわる際の前提
    ・家族への支援 ほか

  4. 認知症の医学的理解と支援の実際(認知症の理解Ⅱ)

    ・認知症とは
    ・認知症の診断
    ・認知症の原因疾患とその病態
    ・中核症状へのかかわり方の実際
    ・BPSD(行動・心理症状)へのかかわり方の実際 ほか

  5. 障害の基礎的理解(障害の理解Ⅰ)

    ・「障害」のとらえ方
    ・障害者福祉の基本理念
    ・障害のある人へのかかわり・支援の基本
    ・家族の理解と障害の受容支援
    ・介護負担の軽減 ほか

  6. 障害の医学的理解と支援の実際(障害の理解Ⅱ)

    ・視覚障害
    ・聴覚・言語障害
    ・運動機能障害
    ・障害のある人がふつうに暮らせる地域づくり
    ・地域におけるサポート体制 ほか

  7. 介護に関連するからだのしくみ(こころとからだのしくみⅠ)

    ・基本的なからだのしくみ
    ・栄養素とエネルギー
    ・代償的な栄養摂取法
    ・入浴と清潔保持の意味
    ・着脱、整容、口腔清潔の意味 ほか

  8. 心身の構造・機能と介護における観察のポイント(こころとからだのしくみⅡ)

    ・人間の欲求の基本的理解
    ・こころのしくみの基礎
    ・ボディメカニクスの活用
    ・移動・移乗、食事、入浴、排泄、身じたく、睡眠を阻害する要因の理解
    ・終末期から危篤状態の変化の特徴 ほか

「医療的ケア」の分野で学ぶこと

  1. 医療的ケア実施の基礎

    ・喀痰吸引等制度(社会福祉士及び介護福祉士法の改正)
    ・医療的ケアと喀痰吸引等の背景
    ・喀痰吸引や経管栄養の安全な実施
    ・療養環境の清潔,消毒法
    ・健康状態を知る項目(バイタルサインなど) ほか

  2. 喀痰吸引(基礎的知識・実施手順)

    ・高齢者および障害児・者の喀痰吸引概論
    ・高齢者および障害児・者の喀痰吸引実施手順解説

  3. 経管栄養(基礎的知識・実施手順)

    ・高齢者および障害児・者の経管栄養概論
    ・高齢者および障害児・者の経管栄養実施手順解説

  4. 演習

    ・喀痰吸引のケア実施の手引き
    ・経管栄養のケア実施の手引き
    ・救急蘇生法の手引き

費用

かかる費用は全部で約4〜20万円

実務者研修を受講するにあたってかかる費用は、これまでに取得した資格や研修を受ける機関によって異なりますが、おおよそ10万円前後が一般的です。
無資格であれば約15万円から22万円初任者研修を受講済みであれば約10万円から20万円ヘルパー1級を取得していれば約7万円から10万円ほどが目安です。

一部費用が補助される可能性も

地方自治体や公的機関などへ問い合わせてみると、一部費用が援助されたり、奨学金制度が受けられたりする可能性があります。金額面で悩まれている方はぜひ調べてみてください。

 

初任者研修との違い

ここまで、実務者研修について紹介してきましたが、「初任者研修とは何が違うんだろう」と思われている方も多いでしょう。ここでは、実務者研修と初任者研修の違いについて紹介していきます。

初任者研修については、以下の記事で詳しく紹介していますので、併せてご覧ください。

レベルの違い

初任者研修は、介護職で働く者としての基礎的な知識や技術を学べるプログラムです。
その一方実務者研修は、初任者研修をすでに修了している人などが、より高度な知識や技術を学ぶプログラムです。どちらかを選ぶというよりは、まずは初任者研修を受け、さらに学びたい人は実務者研修を受けるという流れが正しいです。

受講期間の違い

先ほど、実務者研修の合計時間は450時間とお伝えしました。
一方で初任者研修は、合計時間が130時間と圧倒的に短くなります。
受講期間の面で見ても、まず取り組むべきなのは初任者研修と言えるでしょう。

 

実務者研修を受けるメリット

介護福祉士の受験条件に含まれている

国家資格である介護福祉士」の受験要件には、実務者研修の修了が含まれています(福祉系の高等学校の卒業実績がない状態で介護福祉士を目指す場合)。一方で初任者研修は、受験要件に含まれていません。

専門的な知識とスキルの習得

実務者研修では、初任者研修よりも専門的な介護の知識を学ぶことができます。介護職に勤めていて、もっと学んでスキルをつけたいと考えている方にはうってつけです。

介護を受ける方のニーズに応える能力が身に付く

実務者研修では、基本的な介護の知識だけでなく、コミュニケーションスキルなども詳しく学びます。介護を受ける方とのコミュニケーションがうまくいかない、といった悩みがある方は、実際に研修を受けなくても、まずは実務者研修のテキストを買ってみるのもオススメです。

採用の要件になっていることも

一部の介護施設では、実務者研修を修了していることが採用の条件となっていることもあります。
「より条件の良い職場に就きたい」と考えている人は、実務者研修を受けることで、就職選択の幅を広げるチャンスを掴めます。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。この記事では、介護職の実務者研修について、その内容や費用、受講するメリットまで詳しく解説しきました。

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