訪問介護で爪切りはOK?| ヘルパーが医師法違反になる行為について解説!

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訪問ヘルパーの業務には、想像以上に制限があります。「できないこと」として代表的なのが、医療行為です。しかし、現場で働く中で「医療行為ってどこから?」「爪切りは医療行為に含まれるの?」と困惑してしまうこともあります。

今回は、知らず知らずのうちに医師法違反を犯してしまうことがないように、爪切りに焦点を当てながら訪問ヘルパーの医療行為について解説していきます。

 

爪切りは医療行為?

爪切りは医療行為に含まれます。しかし、本来医療行為は禁

 

止されている訪問ヘルパーですが、爪切りに関しては対応してもよいとされています。

平成17年に厚生労働省は、原則として医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の規制の対象とする必要がないものとして

爪そのものに異常がなく、爪の周囲の皮膚にも化膿や炎症がなく、かつ、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合に、その爪を爪切りで切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること

を挙げていて、「爪が正常である場合は爪切りは規制の対象ではない」と提示しました。

参考:厚生労働省 各都道府県知事あて厚生労働省医政局長通知

爪に異常がある場合

爪そのものに異常がある場合とは、例えば以下のような状態です。

  1. 巻き爪: 爪が周囲の皮膚に食い込むように成長し、痛みや炎症を引き起こす状態
  2. 爪白癬(みずむし): 爪に真菌が感染し、爪が白く変色したり、厚くなったり、剥がれたりする状態

爪そのものに異常がなくても、爪の周囲の皮膚に化膿炎症があった場合は訪問ヘルパーが爪切りを行うことはできません。炎症があるときに爪を切ると感染を広げる可能性があり、医師の指示が必要になります。

また、利用者さんが糖尿病の場合も、足病変(あしびょうへん)という慢性的な合併症の危険性などから専門的な管理が必要であるため、訪問ヘルパーが爪切りをすることはできません。糖尿病性足病変では、傷や潰瘍がなかなか治りにくいなどの問題が生じます。

 

正しい爪切りのやり方

爪が正常な場合、介護職であっても爪切りを行うことができます。しかし、爪切りは刃物の一種であり、利用者に刃物を使用する行為となるため、正しく行わないとケガをさせてしまうかもしれません。訪問ヘルパーの爪切りで気を付けたいポイントを押さえておきましょう。

  1. 指の間の薄い皮膚に注意: 爪切りをする際には、爪と指の間の薄い皮膚を傷つけないように注意しましょう。爪切りを使う際に、指先の皮膚を押し下げるようにして爪だけを切ることが大切です。
  2. 少しずつ切る: 爪を一度で切ろうとせず、少しずつ切ることが大切です。爪にヒビが入るのを防ぐため、慎重に少しずつ切りましょう。
  3. 足の爪の特徴に留意: 足の爪は手の爪よりも厚く割れやすいことがあります。そのため、丁寧に爪を切る必要があります。
  4. 深爪にならないようにする: 爪の白い部分を1~2mm程度残すことで、深爪になるリスクを減らします。また、爪の角を残すことで、巻き爪を防止できます。
  5. スクエアカットを意識する: 爪は指の丸みに沿って切るのではなく、四角(スクエアカット)にするイメージでまっすぐに切りましょう。
  6. 爪ヤスリを使う: 最後に爪ヤスリを使い、角の尖った部分を軽く落とします。爪を切るのが難しい場合は、爪ヤスリを使って形を整えることも有効です。

また、変形した爪やもろい爪を無理に切ると痛みを感じる可能性があるため、利用者の感覚を尊重し、必要に応じて爪ヤスリで手入れする方法も考慮しましょう。足の爪のケアは慎重に行い、利用者の健康と安全を最優先に考慮することが重要です。

 

認められていない医療行為をした場合

訪問ヘルパーが認められていない医療行為をおこなった場合、それは医師法違反に当たり、3年以下の懲役、100万円以下の罰金などの刑事罰が科されます。

禁止されている医療行為の中には、一見誰がおこなってもよさそうだと感じ、そのまま処置しようとしてしまう人がいます。しかし、専門的な知識がない場合にはおこなってはいけない処置であり、医療知識がない状態で医療行為を行うのは法律違反です。医師法違反にならないよう最善の注意を払い、禁止されている医療行為かどうかわからない場合は必ず相談するようにしましょう。また、これらの線引きについて理解していない利用者さんも少なくありません。訪問ヘルパー自身が利用者さんに説明できるようになっていると良いでしょう。

 

訪問ヘルパーができること・できないこと

では、訪問ヘルパーができること・できないこととは具体的に何が当てはまるのでしょうか

できること

医療行為に当てはまらないため訪問ヘルパーでも対処可能なものと、医療行為に当てはまるものの、条件次第で訪問ヘルパーでも対応してよいものがあります。

医療行為に当てはまらないこと

  • 体温測定:水銀・電子体温計の脇下計測、及び耳式計測
  • 自動血圧測定器を使用した血圧測定:自動血圧側的の使用・介助
  • 動脈血酸素飽和度測定:パルスオキシメーター(SpO2)の装着
  • 応急処置:切り傷・擦り傷・火傷など
  • 軽度な処置:専門的な判断や技術を必要としない処置(ガーゼ交換・絆創膏の貼付・湿布の貼付)
  • 服薬介助一包化された薬の服薬補助・見守り
  • 点眼
  • 座薬の挿入
  • 鼻腔粘膜への薬物噴霧(点鼻薬など)

ここで、服薬介助におけるポイントになるのが「一包化された薬」であることです。「一包化された」とは一度に飲む薬が一袋にまとめられていることを指し、服薬介助で可能なのは一包化された薬を利用者さんが飲めるように介助したり、服薬の様子を見守ったりすることのみです。複数の薬の服薬を整理・調整することは服薬管理という医療行為に当たってしまい、訪問ヘルパーがおこなうことはできません。勘違いが起こりやすいポイントですので注意しましょう。

医療行為に当てはまるが、条件付きで許可されているもの

  • 爪切り ※爪の皮膚に化膿や炎症などが見られず、糖尿病ではない場合
  • 口腔内洗浄(歯磨きや口腔粘膜の洗浄) ※重度の歯周病ではない場合
  • 耳垢の除去 ※耳垢栓塞ではない場合
  • ストーマのパウチに溜まった排泄物の除去 ※肌にパウチが接着していない場合
  • 自己導尿を補助するためのカテーテルの準備・体位変換 ※カテーテルの挿入はできない
  • 市販の浣腸を用いて処置を行う ※摘便はできない

つまり、異常などがなく、専門知識を必要としない場合の医療行為は問題ないということですね。

できないこと

訪問ヘルパーができない医療行為の具体例は以下になります。

  • インスリン注射: 糖尿病の治療で行われる処置
  • 摘便: 肛門部から指を入れて直腸を刺激し便を排出させる
  • 点滴の管理: 手足の血管に直接栄養剤や水分を投与する
  • 床ずれの処置: 長時間同じ体勢でいることで起こる皮膚の炎症や損傷に対する処置

これらは医療行為であり、専門知識が必要なため、医師の指示の下でなければおこなうことはできません。しかし、器具の準備や見守りなど、サポートとしては可能な部分もあります。

 

まとめ

爪切りは医療行為ですが、爪や皮膚に異常がなく、糖尿病などの基礎疾患がない場合には、訪問ヘルパーでもおこなうことができます。爪切り以外にも、医療行為にあてはまらないもの・条件つきで許可されているものをしっかり理解し、訪問ヘルパーにできること・できないことの線引きに気を付けましょう。わからない場合には自己判断せず、相談することが大切です。知らない間に医師法違反にならないよう気をつけましょう!

この記事が参考になれば嬉しいです。

 

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