医療資格のなかで、身体に障害がある方と接するという点で介護福祉士と似た職業である理学療法士。この記事では、そんな「理学療法士」について、仕事内容や給料、介護福祉士との違いや介護現場における役割について詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてください!
理学療法士とは
理学療法の定義
障害に対し、基本的動作ができるように治療する
理学療法士については、理学療法士及び作業療法士法(昭和40年法律第137号)により以下のように定義されています。
介護福祉士との違い
介護福祉士は「専門的知識及び技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うこと」と定義されています。
仕事内容における介護福祉士との違いは、サポートの範囲とそれぞれの専門性です。
介護福祉士は利用者の身体的介助だけではなく、日常生活の支援や社会参加の促進にも重点を置いた業務を担当していますが、理学療法士は身体的な機能障害のリハビリテーションに特化した業務を担当します。
どちらも利用者が自立した生活を送ることを目的としていますが、介護福祉士は「それでも一人では難しいこと」を手伝う専門職であり、理学療法士は物理的手段を用いて身体的機能の回復を支援する専門職であるといえます。
理学療法士の仕事内容
理学療法士の仕事内容は主に以下の四つになります。
- 評価
- プログラムの設計
- 身体能力回復訓練
- 患者さんや家族へのアドバイス
それぞれ以下に詳しく解説します。
評価
患者さんの身体機能や基本動作などを診断し、その問題点やリハビリテーションの必要性について評価します。具体的には、病歴・けがの経緯・手術履歴などの情報の収集から、様々なテストによる筋力・関節可動域・バランス・姿勢制御・感覚機能の評価などです。
プログラムの設計
それらの評価結果を分析し、その患者さん特定のニーズや目標に基づいた、運動療法や物理療法のリハビリテーションプログラムを立案します。
運動療法
身体の一部あるいは全体を動かすことによって、症状の回復を促す療法です。例えば、歩行訓練を行うことで関節の動きの回復を目指すのはこれに当たります。運動療法は、一般的なリハビリテーションのイメージかもしれません。
物理療法
外部からマッサージ・電気療法・温熱療法などの物理的な刺激を与え、運動能力を回復、痛みを軽減させる療法です。干渉波・SSP・牽引などを用いて治療を行います。
身体能力回復訓練
プログラムに基づいて、医師の指示を仰ぎながら訓練や治療を行います。運動療法や物理療法を用いて身体能力・基本動作の改善を促します。
患者さんや家族へのアドバイス
リハビリテーションの目標や方法、自己管理のための自宅での運動や予防策、日常生活の工夫、自己管理の方法など、家族への介助指導や生活環境改善のアドバイスも担います。
介護の現場における理学療法士
理学療法士の勤務先は主には医療現場ですが、介護施設やスポーツトレーナー、義肢装具の企業や保健センターや福祉センターといった行政機関など、活躍の場は医療機関にとどまりません。
なかでも、高齢化が進んでいる近年では、自立支援を目的とする介護業界において理学療法士の需要はますます高まっています。
病院での業務との違い
「治療のためのリハビリ」が目的である病院での業務に対して、介護現場でのリハビリは「自立した生活を送るための日常生活で必要な身体機能の維持・向上」が目的です。
メリット
一人ひとりの生活に寄り添えるのは介護現場における理学療法士の魅力です。病院では、患者さんがリハビリを終えて退院するとそれ以降の患者さんの姿を見ることはできませんが、介護現場の場合は利用者さんの日常生活に密着している場合がほとんどであるため、一人ひとりに寄り添う長期にわたったリハビリが可能になります。
デメリット
施設によっては、人手不足などにより介護と理学療法の仕事の境目があいまいで、理学療法士に対しても介護業務のサポートが求められることがあるかもしれません。
理学療法士になるには
資格
国家資格である理学療法士になるには、厚生労働省が実施する理学療法士国家試験に合格し、「理学療法士及び作業療法士法」に基づく厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。また、文部科学大臣指定の養成校で3年以上学び、決められた課程を修了しなければ国家試験の受験資格が得られないため、理学療法士を目指すにはまず養成校に通う必要があります。
国家試験は例年2月下旬に行われ、試験科目は一般問題と実地問題の2科目で構成されています。
詳しくは厚生労働省のホームページで確認しましょう。
理学療法士の給料
理学療法士の平均年収は、残業代やボーナスを含め、約426万円です。ほかの医療職と比較するとやや低めですが、それには平均年齢が約35歳と比較的若く勤続年数が浅いことが関係しています。若い理学療法士が多い理由には、1999年の規制緩和により養成校が急増したことが背景としてありますが、近年で有資格者が大幅に増加し続けていることを考えると、理学療法士は高齢化などにより活躍の場が増える一方で、将来的に飽和状態になることも懸念する必要があるかもしれません。
参考:厚生労働省『令和3年 賃金構造基本統計調査(職種)第1表 職種(小分類)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)』(e-Stat)
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、医療資格の一つである「理学療法士」について、介護現場での活躍にも焦点を当てながら、仕事内容や給料など詳しく解説しました。
介護職やリハビリ職、理学療法士に興味があるという方の参考になれば幸いです。
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